尾道 11:39

 
 

 
爽やかな初秋の陽射しの下で撮影できる二人は幸運である。
 
海岸に向かう車の中で「わたし雨女なんです」と言っていた彼女はよく笑う人だった。
 
撮影最初のカットで、僕が指示した場所に立ちながら「どんな表情すればいいですか」と聞いてくる。僕はそれに生返事をしながら、カメラを構えると、なんのことはないもう自然に笑っている。
 
何も言わないでいいこともあるのだ。
 
結婚式は11月だそうで、いい天気になるように祈ります。

 

週間天気予報では来週も真夏日の暑さが続くようで、きっと彼岸の頃までは残暑が厳しいのだろう。
 
それでも今夜は湿気もなくて久しぶりに過ごしやすい。
 
我が家はキャンプには行かないけれども、家から徒歩5分の海を眺めながらお酒を飲む。
 
駅隣に「福屋」という小さな百貨店があって、そのデパ地下にある惣菜店で好きなおつまみを買って、お酒は駅のセブンイレブンで買って、ぼんやり海を眺めながら飲んでいる。 
 
福屋は年明け早々に閉店するそうで、そのあとはどうなるんじゃろうねえ。
 


いつまでも同じことができるわけではないから、できるうちにやっておかなければならない。

飲み始めたのが遅かったので、ミチコさんがビールのロング缶を空ける頃には空はもう暗く、布を裂くような海鵜の鳴き声が聞こえたけれど、姿は見えなかった。