尾道 15:04
尾道山手の坂道は細く入り組んで迷路のようである。
もっとも、迷ったとしても階段をずっと下りていけば国道2号線に出るから困ることはない。
三原の歯医者さんの定期検診に行ってきた帰りに坂道を自転車で押して上がっていたら、近所のおばあさんが若い男女に一生懸命道を教えている。
千光寺に上る坂の途中にある古民家を改修したゲストハウスに行くのだそうだ。
お寺の名前を挙げて、そこの脇道を左に、と言ってもたぶんわかるまい。
スマホを持っているのだからGoogleマップで調べればいいのにとも思うが、地図から現実の路地に見当をつけるのも難しいだろう。
案内しますよと言って、二人の前に立って歩く。
そこからゲストハウスまでは直線距離にして500メートルくらいである。
横に並んで歩くこともできない細い坂道を右に左に歩いて階段を上る。
二人は千葉から旅行で来たそうだが、坂道を上りながら息が上がっている。彼女が「体力の衰えを感じる」とこぼす。
時間にして10分ほどだが、初めて歩く道というのは長く遠く感じられるものである。
ましてだんだん暗くなってゆく路地を歩くのは不安もあったろう。
坂道を上り切ると目指すゲストハウスが目の前に現れて、「え、ここ？」にわかに信じがたい二人は声をあげる。
眼下には暮れかけた尾道水道が見えている。
尾道は街自体がテーマパークのようなものだ。
駅からよくわからない坂道をひたすら歩くというアトラクションを楽しんでもらえたろうか。不便で体力使うけど。
歯科検診終わり。「よく(歯を)磨けてますね」と褒められる。出向く前にちゃんと歯磨きしてますから。
道案内した二人。尾道を楽しんでください。
今夜は飲みに出かける。
