尾道 18:18

 
 


買物から帰る途中、駅裏の小さな雑貨屋に坊主頭の男子高生が入っていく。

珍しいなと思いながら店の前を自転車で通り過ぎるとき「猫ちゃんいたー」と彼の声が聞こえてきて、尾道は猫好きが多いらしい。


  
猫には一家言を持つミチコさんにとって尾道は野良猫に冷たい町だそうだが、どこの自治体も似たり寄ったりである。
 
街に猫が特別多いわけでもない。

観光客は野良猫を見つけて喜んで写真を撮るし、市立美術館に入ろうとする猫はSNSで全国的に有名になったりして、尾道といえば猫と思われるようになったが、それらは人々が作り上げたイメージ(偶像)みたいなものだ。


 
家の近くの路地の真ん中にハチワレの猫が寝そべっていて、それを高校生のカップルが眺めている。
 
彼らに声をかけて避けてもらい、自転車を降りて猫のそばを押して通る。
 
猫は悠然と寝たまままったく気にも留めない。その様子を見て二人が「すげえ」と呟く。

猫は人間どもには我関せずと今日も自分勝手に生きている。