山陽本線倉敷駅 15:54
「とぅろぉんろぅー」という新郎の滑らかな発音を頭の中で「トロント」に変換しなければならない日本人の僕である。
カナダ人の新郎と倉敷出身の新婦は、慣れない着物を来て柳の緑が揺れる川沿いをそぞろ歩く。
たぶんこの先一生着ることのない服を着て写真を撮るというのも、よく考えてみたら不思議なものだけど、それが結婚なのだ。
二人とも物静かである。
彼に彼女の好きなところを尋ねたら「穏やかなところ」と答える彼の声も小さい。
そういうところで気が合ったのかもしれないなあと撮りながら思う。
重たい白無垢を脱いで軽やかなドレスに着替えると、彼女は見違えたように元気になる。
彼の地に住んで7年という彼女は立ち振る舞いがすっかり西洋スタイルに馴染んでいて、ぴたりとジャケットを着こなした彼とカジュアルに立っているだけでそのまま絵になる。
このあたりは日本人カップルががんばって真似しようとしてもなかなかできない。
日本滞在は2週間だそうだ。
遅めのバカンスを楽しんで、とぅろぉんろぅーでの新婚生活が幸せなものでありますように。