尾道 16:19

  
 
 

冷たい雨なのだけど、春雨のように柔らかく降る一日であった。
 
ミチコさんが猫2匹を動物病院に連れて行くというので、車を動かす。
 
我が家から駐車場までは自転車で10分ほど離れているから、どうしても行き帰りは雨に濡れる。坂の町に住むというのはこういうときに不便である。
 
とりあえずミッションを終えて家路を辿るところで、階段下の踏切が鳴った。
 
写真でも撮っておこうかとカメラを取り出す。
 
春になれば満開の桜の下を電車が通り過ぎるスポットである。今は当然ながら桜の木にはまだ蕾の形もない。
 
しかし、今までほんとに気がつかなかったのだが、梅の木もそこにあったのだった。
 
住む人のいなさそうな家の、荒れ果てた庭に桜を梅を配置したのは誰だったのだろうう。
 
彩りの少ない2月の雨景色の中にそこだけ薄紅の絵の具を落としたような梅の花を仰ぎ見るようにして山陽線の黄色い電車が通り過ぎる。