尾道 16:53



 

  
発送品を持ってヤマト運輸のサテライトを訪れたが休みであったので、コンビニへ持ち込む。
    
正月休みの店はあるが、開いているお店には観光客が集まって繁盛しているようだ。
  
たまに行く居酒屋さんも夕方から表に看板を出している。まだ市場が始まっていないから新鮮な魚介類は置いてなさそうだけど、観光客相手ならば商売になるのだろう。
 
 
昨日は、ミチコさんの母上に年始の挨拶をしに隣県まで行って来た。広島県の東の端に位置する尾道からは、高速道路を使っても2時間かかる。
  
老人ホームではテレビのある部屋に老人たちが集められて、バラエティ番組のようなものを見ていた。彼らは無表情にテレビを眺めており、僕が廊下を通ると首を振ってこちらを見る。
 
彼女の自室で挨拶をすませると、母娘を置いて僕は一人でロビーで過ごす。認知症らしき婦人が食べたはずの昼食はまだかと介護士に尋ねており、廊下の奥からは「同期の桜」を吹く口笛が聞こえてくる。
  
しばらくして出てきた二人を乗せて、今は住む人がいない自宅へ向かう。僕は後ろの座席に並んで座った二人のおしゃべりを運転しながら聞いていた。
  
彼女がそこに入居してから三人亡くなっているそうだが、入居者の死は暗黙の了解で話題に上らぬらしい。
  
老人ホームという閉じられた空間で、ひっそりとこの世を去るのがその人にとって本意だったのかどうか。僕がそこを訪れるのは年始だけなのだが、いつもいつか我が身に必ず訪れる老いと死を考えさせられる。
  
実家に着いた母上は、久しぶりの我が家に嬉しかったのであろう。次々にタンスや戸棚を開けて、あれを持って帰れこれはいらぬかと娘にすすめてそのつど断られていた。