常磐線亀有駅 12:44
爽やかな五月晴れの街を、赤ちゃんを抱っこした夫婦が楽しそうに歩く。子どもが生まれた嬉しさが伝わってくる。
神社にはママの両親が待っていてお宮参りである。
祈祷が終わってパパが書いた絵馬には「健康で最高に幸せな人生を」とある。よく笑う二人の子どもなら、その通りになりそうな気がする。
赤ちゃんはほぼずっと寝ていて、家に帰っても起きる気配がない。
せっかくだから目を開いた写真が撮りたいと、なんとか起こしてみたが泣かれてしまってあまり写真が撮れなかった。
こういうときよく「泣き顔でもいいですよ」と言われるのだが、それでは満足しないであろう。
やっぱり親は子どもの笑った顔を見たいのである。
撮影終わったあとの、亀有駅でのできごと。
電車に乗ろうとしたら、降りてきた人がいたので、ちょっと下がると、カメラバッグが後ろの人に当たった。
すると腕をぐいっと掴まれて「オイちょっと待てコラ!」振り返ると六十くらいのおじさんが「何すんだテメエ!降りろ!」と怒鳴る。
やれやれ面倒くさいのに絡まれたなあと思いつつ、そこで押し問答してると『お客様トラブル』で電車が遅れるので、素直に降りる。
そんなに強く当たってないと思うのだが、彼が激昂してるので、とりあえず駅員の窓口まで行くかと言うと、「なんだよテメエが呼んでこいよ」と言う。逆やろと思いつつ、とにかく駅員のいる改札口まで行こうと説得。
エスカレーターを降りながら彼は「オレの時間をどうしてくれるんだよ」となおも絡む。
それはこっちの台詞だ貴方が降りろと言ったからこうなってるというと彼は一瞬言葉に詰まって「そうきたか……」と呟く。
改札口に着いて駅員に顛末を説明してると、横から彼が「警察を呼べ!」と言う。
こんなつまらんことで呼ばれる警察もご苦労だが駅員が電話をしに奥に消えると、彼は黙ってまたホームへ戻ってゆく。
つまり逃げたのであって、オイちょっと待てコラ!と僕が言いたいところだが時間の無駄だし、駅員にもういいですお騒がせしましたと言って、小競り合いのようなものは終わった。
「名刺出せ」だの「オレは亀有だよ」だの威勢のよいことを怒鳴っていたおじさんは今日一日穏やかに過ごせるのだろうか。
それにしてもこういう人は相手を選んで絡んでくるもの。僕のように見た目が若くて細めでイケメンだとナメられやすいので困ったものである。