尾道 17:27

 
 


ようやく痛みから解放された。長かった。
 
原因は胃と十二指腸の潰瘍である。
 
 
 
先月からなんとなく胃が痛かった。
 
それでも検査にも行かず毎晩飲んでいたのだが、下血が2、3日続いてさすがにこれはまずかろうとようやく病院に行ったのが先週の月曜日。そのときすでに貧血症状で家の階段を上るにも息が切れる。
 
向島に胃腸科の病院があるのは知っていたので自転車で行く。真夏の陽射しがきつい。
 
ようやく受付にたどりつくも、スタッフにコロナ感染者が出たということで検査はできませんと、入口で返される。
 
しかたがないので、車を運転して消化器化を掲げる別の病院へ行く。初診は問診と採血だけ。まあそうだろう。
 
翌日、人生初の内視鏡検査。生きてるといろんな経験をするものです。先生が「はいごっくんしてー」とチューブ状の胃カメラを喉の奥に挿入すると同時に思わずむせる。横になったまま涙目である。
 
ずっと昔にやったバリウム検査もしんどかったけど、胃カメラのほうが2割増しくらいできつい。
 
先生は手慣れた様子でチューブを動かし、写真を撮ってゆく。モニタに映し出される自分の胃の中を見たのは初めてだがなんの感動もない。時間にして5分くらいだろうか。ようやくチューブが引き出されてほっとした。 
  
「胃潰瘍と十二指腸潰瘍だね」ごく当たり前のことのように先生は言う。胃壁についている白いかさぶた状のものが潰瘍であるらしい。良性でピロリ菌がいるとのことで、投薬で除菌するという。
 
思い当たることといえばお酒しかない。しかし、診察が終わって立ち上がるときに先生が小さくぼそっと「ストレスがあったんだねえ」と言うから、え、そうなの?と僕は意外な気がした。
  
とはいえ、これで禁酒確定である。皆勤賞を狙っていた生徒がいきなり病気になって学校を休んでしまうときの挫折感はこういうものかと思いながら、車を運転して帰った。
 
 

あいかわらず貧血気味で少し動くとふらふらしていたが、翌日からなぜか頭痛が始まった。
 
偏頭痛のようなものだが、ギリギリとする痛みである。鎮痛剤飲んで寝れば治るかと思ったら、まったく効かないおさまらない。
 
頭痛が一日中続くという経験は初めてである。

体は動くので昼間仕事をしようとPCの前に座っても、痛みで30分とモニタを見れない。夜中もうつらうつらしては1時間おきに痛みで目が覚める。横になっていられない。
 
止まない痛みは、拷問のようなものだ。
  
今回、胃潰瘍よりもこの頭痛が一番辛かったです。
 
まったく止まない頭痛が4日間続いて、これは脳の血管が詰まったりしてるんではなかろうかと思い始める。
 
ネットで探すと隣の福山市には脳神経外科の専門病院があった。さすが福山は都会だ。車の運転が怖いので、電車とバスで訪ねて行ってCTとレントゲンを撮ってもらう。
 
先生は輪切りにされた脳のCT画像を見ながら「とくになんもないんだよねえ。しいて言うなら」と頭蓋骨のレントゲン写真を出して、頚椎が若干曲がっていることを指摘する。要は僕の姿勢が悪いのである。
 
先生は不安な老人を諭すように腕を動かすといいですよと僕に言い、「いちおう薬出しときますから、飲む湿布薬みたいなの」と付け加えた。あまり深刻な頭痛でないことはその口ぶりからわかった。
 
ほっとしたのがよかったのだろうか。翌日、霧が晴れるように痛みが遠のいていき、永遠に続くのかと思った頭痛生活がようやく終わった。
 


今回はこれで予定していた撮影を2件お断りしてしまった。本当に申し訳なく思う。
 
身体的に辛い1週間だったが、喉元過ぎれば熱さを忘れるというもので、おそらくそのうち痛みの記憶も薄れるだろう。しかし体の不調リスクの怖さはこの先消えないように思う。より慎重に生きていかねばならない。
 
 
 
それにしてもお酒が飲めないというのは、辛いというよりツマラナイものですねえ。
 

 
 
7月25日 向島の病院へ。

7月26日 胃カメラ記念日。

鯖塩焼きをねだるきゅうちゃん。

7月27日 何もできぬまま一日が終わる。

とにかく暑い。

7月28日 頭痛を押してマッサージを受けに行く。

マッサージの鎮痛効果は2時間ほどで終わった。

7月29日 今夜も寝られなさそう。

7月31日 ようやく頭痛がおさまってきた。

今夜はちゃんと寝られるだろうか。

8月1日 体力が3割くらい落ちた気がする。

何もできないまま夏が過ぎてゆく。もったいない。

せめてはいつものグラスに氷を入れて ぼーっと空を眺めてみん。