京浜急行電鉄本線県立大学駅 12:27

 
 

 
真夏の公園は暑すぎて誰もいない、と思ったらバーベキューしてる人たちがいて、根性あるなあと思う。

芝生の向こうに海が見える。やたらと青い。夏が極まっている。
 

 
六歳と一歳兄妹の家族写真である。
 
お兄ちゃんはすぐに遊んでくれるが、妹ちゃんはなかなか僕を見てくれない。
 
1〜2歳の子どもだと、僕に関心を持ってもらわないと笑わない。
 
写真を撮られてる認識はまだないから、なんだか楽しそうな人がいるな、ぐらいに感じてもらう必要がある。
  
しかし途中から誕生日のお兄ちゃんばかり撮ってしまったのがいけない。
 
いざ家族写真を撮ろうとしたら、まったく見てくれなくてぐずってしまう。お兄ちゃんも機嫌を損ねてしまうし、なかなか上手くいかないものである。

 

似たようなケースで、兄姉のいるお宮参りでは、主役の赤ちゃんよりも兄姉とのコミュニケーションに時間をかけなければならない。
 
赤ちゃんが泣かなくても、子どもが笑っていないと親はがっかりするものなのである。
 
今日は撮影のはじめのうちに兄妹の写真は撮れていたから、よかったとしよう。
 


撮影終わって京急の県立大学駅まで歩く。
 
ふと脇を見たら、赤い暖簾にラーメンの文字。気がつかずに通り過ぎてしまいそうな地味な店が狭い道に佇んでいる。
 
暖簾の向こうはガラス戸で、その中は暗い。
 
でも暖簾が掛かっているということはやってるんだろう。
 
入ってみたら店の中は昭和のまま時が止まっている。
 
声をかけると店の奥から七十過ぎと見える店主が出てきて麺を茹で始める。
 
カウンターの椅子に座る。擦りガラス越しに赤い暖簾が風に揺れるのが見える。店の中はテレビもなく寂としている。
 
ラーメン屋なのにどこかの古刹にいるような心持ちさえする。ガラス戸からにじむ光のなんと美しいことか。



出されたラーメンをいただいて店を出るときに、店主に風が出てきましたねと言うと、「だあれも通らねえから困ったもんだ」と彼は歌うような調子で愚痴をこぼした。