外房線茂原駅 18:13
たぶん昭和40年代くらいに田んぼを埋めて作られた住宅地なのだろう。
バスを降りて通りを歩きながら考える。団塊の世代がサラリーマンになりたての頃に分譲された土地に新しい家を建て、それが年月を経て相応に古びて並んでいる。
パパの実家に伺うと「いらっしゃい」と奥の台所から母上が顔を見せる。ハリのある声である。
茶の間には四人の子どもがいて、高校生の長男、中学生の長女、小学生の次男はスマホのゲームに夢中になっており、歳の離れた四歳の妹ちゃんだけが勝手気ままに動き回っている。
祖母の家で過ごす夏休みの一日である。
パパは子どもたちにスマホをやめてばあちゃんと戯れているところを撮ってもらえと言うのだが、無茶振りである。いきなりそんなことが自然にできるはずもないから、まずは様子見。
なんとなく流れを作ってから、おばあちゃんと子どもでじゃんけんしてもらったり、庭で遊んだりする写真を撮ります。
台所の隣の茶の間には仏壇がある。
パパの父上であろう遺影が鴨居にかかっている。仏壇の位牌を見たら、亡くなられて十数年ほど経つようだ。
昭和に建てられた家だから、床の間のある和室がある。仏壇を置く仏間もそこに作られることが多い。
家の中で家族写真を撮るなら和室の床の間を背にして座るのがいいだろう。
しかし、その家の中心は仏壇のある茶の間であるように思う。
仏壇と並ぶように家族に座ってもらった。28mmだと画角に余裕がなくなるので20mmをつける。
いつもなら遺影を下そうとは思わないのだが、おじいちゃんも写真に入れましょうかと僕がご母堂に言ったのはなぜだろう。
「そうだおやじも入れよう」パパが額を下ろして埃を払い、正座したおばあちゃんの膝の前に軽く笑みを浮かべるおじいちゃんが収まる。
きっと彼が家族の輪の中に入りたかったんだろう。
あとで彼女は夫の思い出を話してくれた。穏やかな、いい人だったそうである。
千葉県茂原市中の島町 17:06
本日の撮影無事終わり。2件目はパパのご実家での家族写真。撮影終わってからおばあちゃんからお手製のモツ煮をごちそうになる。汗をかいた後においしかった。
茂原市茂原あたり。夕暮れの街。