山陽本線瀬戸駅 15:29
「この陽射しは人を殺しにかかってる」
物騒なセリフをママのお義姉さんがつぶやく。
実際その通りで、一歳の女の子を外で遊ばせたくない。
とはいえ、おうちの中で兄弟二家族と還暦祝いのためにカープの赤いTシャツを着た両親をまとめて撮るのはとたも難しい。
10分ずつ順番に外に出てもらって木陰で家族写真を撮る。
還暦の夫婦は高校の同級生だという。
「結婚して37年になるの!」おしゃべり好きな母上に比べ、漬物石のようにどっしりした父上は大層寡黙である。
夫婦で撮る写真もあまり乗り気ではなさそう。居間のソファに二人座ってボソボソ話している。
「明日早いんだよ」「何時」「4時」「帰りは」「帰らない」
思わず仕事は何かと尋ねてしまった。
なんと父上はバスの運転士だという。本物の「中の人」だ。それだけで僕の中の彼への好感度が上がる。
それにしても、60歳で始発から終発(宿直)まで働くのは過酷ではあるまいか。昨今バスの運転士不足が問題になっているが、その一端を垣間見る思いがする。
たいへんな仕事だ。
夫婦の写真では彼のテンションはまったく上がらないが、孫を抱っこしてもらうととたんに表情が緩む。
子は宝で元気の源。お二人には長生きしてほしいものである。
山陽本線姫路駅 11:02 とにかく人が多い。相生で岡山行きに乗り換えなのだが、「わかっている人」は姫路駅から乗るときからして乗り換えに便利な場所に並んで列車を待っている。おそらく18きっぷで数多の乗り換えをしてきた者達だ。雰囲気が違う。