山陽本線尾道駅 13:06
福山から「のぞみ」に乗り込んで、車両の一番後ろの3列シートに座ると、すぐ後から重そうな輪行バッグを抱えた若者が乗ってきた。
彼は僕のほうをちらりと見やってから、畳んだ自転車を抱えたまま車両の中央まで進んで困ったようにあたりを見回す。他に空席はあるが、彼を呼んで席を代わる。彼は最後部の座席と 車両の壁の間の隙間に、自転車を置きたかったのだ。
東海道・山陽新幹線には専用の荷物置場がない。自転車に限らず、スーツケースなど大きな荷物を置いておくスペースは必然的にそこしかない。今は暗黙の了解のように使われているけど、いつか何か問題が起きなければよいがと思う。
彼は僕が譲った座席と壁の隙間に輪行バッグを押し込んで、ほっとしたように座る。検札に来た車掌が彼に輪行バッグを確認して「京都までですね」と言っていたから、僕は彼と一緒に降りることになるらしい。