おのみち渡し船兼吉桟橋 11:42
砂浜に降りる階段の脇には小さな花束が二つ置かれている。
その向こうは青く静かな海が広がっているだけだ。さざ波ほどの波もない。
ただし潮の流れは複雑かつ早い。見た目の穏やかさで泳いではいけない。
付き合って何年目になる？その問いに彼は頭の中で数えて「4年……かな」すかさず彼女が「違うよ5年だよ」
二人は同じ大学で知り合った仲である。
彼女は愛知県生まれ。尾道まで来て前撮りするのは彼の実家が福山市にあるからである。
結婚式も福山でするそうなので、彼女はいずれに広島に嫁いでくることになるのだろうか。
彼女に写真のリクエストを尋ねたら「お姫様抱っこ！」と答えて、彼は膝から崩れ落ちそうになる。
二人とも丸っこい体つきである。
学生時代は野球部でファーストを守っていたという彼も立派な体格の持ち主だが、荷が大きすぎるようだ。
抱っこをおんぶにしてもらったが、それでも彼女の体が持ち上がることがない。
仕方がないので彼女が彼にパンチをお見舞いして彼が吹っ飛ぶ写真を撮る。楽しかった。
二人は似たもの同士であるのだろう。よく笑い仲がいい。
式がいつかは聞かなかったが、どうか佳き日を迎えてほしいと思う。
