福塩線府中駅 12:20
府中市街地を見下ろす小高い丘の上には小さな神社がある。
たぶんずっと昔は城があったに違いないとか考えながら急な階段を上りきったところで、着物を着た女の子を抱っこしたママが迎えてくれる。
三歳の女の子は脱力したように体をママに預けて表情がない。
「絶不調です」と苦笑いしながらママが言う。
まあでも着物を着てればなんとかなるんじゃないか。
女の子はあえて相手にせず、先に二人のお兄ちゃんたちと遊び始めたら、彼女は気になり遊びたくなったらしく、ママの腕から降りて、近寄ってくる。
そういえば今は七歳の長男くんの三歳の七五三だって、ずっとご機嫌悪く泣いていたっけ。
過ぎてしまえば懐かしい。
子どもは四人になり、みんな元気に大きくなっていっているのを見ると、彼らを育てるパパとママはすごいものだと感心する。
神様に向かって手を合わせて子どもの成長を祈願するその足元で、退屈しきった五歳の次男くんは床几から降りて座り込んでしまっているけれど、そんなことには動じない。子育てで親も成長するのだな。
無事にお参りが済むと初夏のような陽気の中、神社隣の公園でひとしきり遊んでみんなで帰ってゆく。
女の子はおもちゃをお兄ちゃんに取られてしまって唇を突き出すようにして泣いて、そのままチャイルドシートに乗せられる。
車とともに賑やかな声が去ってゆくと、代わりに静けさがやってきて鶯の鳴き声がひときわ大きく響く。
春風駘蕩。のどかな春の日である。