山陽本線柳井駅 13:41
撮影終わって駅まで歩く道の途中、お好み焼き屋の隣の空き地に立派な梅の木が三本ほど植えられていて、薄紅の花を鈴なりに咲かせている。
暖かい陽射しを浴びて花も嬉しそうだなと思う。
もうすっかり春だ。先週は雪降る富山にいたのに。
明日が一歳の誕生日だという赤ちゃんは、写真を撮ってるうちにぼーっとする間がときどき入るようになってきたから眠いんじゃないか。
あれこれあやしてみても笑ってくれない。
せっかく写真を撮ろうとあれこれ準備していたママにとってはやや残念だったのではなかろうか。
たいていの場合、子どもというのは親の希望通りにはならないものです。大きくなったとしても。
思い通りにならないからこそ子どもはおもしろい。
柳井駅の南側には出口がないから、駅の南にある市役所のほうから電車に乗るには踏切を渡って回り込むように駅に向かう。
途中で渋い食堂を見つけて入ったら、おばあさんが一人で友達らしきおばあさんにお好み焼きを焼いているところだった。
おばあさんは一人で三枚注文していて、二枚は持ち帰り用のプラスチックトレイに入れられて、一枚は皿に乗せられてカウンターに出る。
それからおばあさんはもうすぐ充電の切れそうなロボットみたいな動きで、ボウルから新しい生地を鉄板に丸く広げ豚肉を乗せその横で麺をソースでほぐしてから生地の上に乗せる。
ゆっくりだけど確実に間違いのない動作である。
聞けば店を始めて47年になるという。
訪ねてくる客にお好み焼きを作って出すことを繰り返して歳を取ってきたのだろう。
やがて焼き上がると食べやすいようにヘラで分けてから皿に乗せられた肉玉そばが僕に運ばれる。
おたふくソースのかかったそれを食べながら、こんな歳の取り方がいいなと思う。
注文をさばいた彼女はよっこいせというふうにくたびれた椅子に腰掛け、虫眼鏡を手に持つと、背を丸めて新聞の片隅に載っているクロスワードパズルを解く。
柳井市役所裏手の空地に立派な梅の木。
