尾道 18:24
ツイッターというのはなかなか便利なSNSで、災害時などは情報収集にとても役立つ。
また、多くツイートされている単語がトレンドとして表示されるので、世情に疎い僕でも巷間の話題をなんとなく把握できる。
そんなわけで、広末涼子が有名レストランのシェフと愛人関係を結んでいたのがバレて謝罪するというニュースもツイッターで知った。
不倫が原因で世間一般に謝るというのもなんだかヘンだなあ思うが、それはさておく。
彼女が直筆で書いた謝罪文が公開されていて、その文字が美しいと話題になっているようだ。
それがこちら。
なるほど、トメハネがちゃんとできて、漢字とひらがなの文字の大きさのバランスもよい。
それよりも「 広 末 涼 子 」とわざわざ半角スペースを入れたかのような、名前の部分に目が引きつけられた。
この四文字は見覚えがある。
20数年前のことである。プランタン銀座という百貨店には小さいながら文具売場があり、新卒で入った僕は真っ先にそこに配属された。
当然ながら海外有名メーカーの万年筆なども置いてあり、万年筆に触れたのはそれが初めてだったろう。
入社して2、3年経ったころだったか、たしかパーカーというメーカーが広末涼子モデルの万年筆を売り出すという。
広末涼子モデルの万年筆!
デザインや色が違っているわけではない。ただ「 広 末 涼 子 」という手書き文字がペン軸に金色に彫られているだけの万年筆。
文具担当者だった僕は迷わず仕入れましたね。
それはとても整った文字だった。
あまりにも字がきれいだったので、これは広末涼子本人ではなく違う人が書いた文字だろうと思っていた。正直に言うと彼女を侮っていた。
当時、テレビで見る彼女は可愛げのある妹キャラであって才媛とは言えなかった。(個人的感想です)
それが誤りであったのを二十年後に知る。
謝罪文の「 広 末 涼 子 」の文字は、万年筆に彫られた「 広 末 涼 子 」とまったく同じであった。
その万年筆は当然ながら売れなかった。
彼女の写真もなく、ただ名前が彫られているだけの万年筆を誰が買うだろう。
そんなわけで僕が買った。たしか2万円くらいしたと思う。
その広末涼子モデルの万年筆が見当たらない。捨ててはないはず。
机の周りを探しながら、昔付き合っていた彼女に会いたいような気分になっている。
夕立が通り過ぎて涼しくなった。