広島県福山市伏見町 17:38
観なくってもいいのだが、観ないと少しは後悔するだろうと思って、福山駅前のミニシアターまで行く。
先月、東京の銀座で久しぶりにフランス映画を見て味をしめたせいである。
日本で仏映画が好きな人はそれほど多くないと思われる。
とくにアクションもないホームドラマのような作品は、はっきり言ってツマラナイ。観ていて退屈。
起承転結がはっきりしない。オチがない。単純なハッピーエンドにならない。唐突に映像がフリーズしてエンドロールが流れ始める。
仏映画にはそんな作品が多いが、僕にとっては、それが味わい深くて、楽しいのだ。
観るのは「それでも私は生きていく」。
パリに住む主人公のサンドラは5年前に夫と死別し、八歳の娘と暮らしながら、別宅にいる認知症気味の父の介護をしている。
ある日、旧友のクレマン(妻子持ち)と久しぶりに出会って恋に落ちる、というストーリー。
R15指定なので、ソフトなセックス描写があります。
観ていて一番驚いたのが、ある夜眠れない娘が「ママ一緒に寝ていい?」とサンドラのベッドに入ってくるのだが、そこにすでに一緒に寝ていた不倫相手のクレマンが「やあ」と挨拶する場面であった。
娘は、あ、いたんだ、みたいな反応でそのまま一緒のベッドに入るのだが、いくら娘が八歳でもありえんじゃろ!とスクリーンに向かって心の中でツッコミを入れた。
フランス人ってそういうの普通なん?
ちなみにサンドラの両親はとっくに離婚してそれぞれ新しい恋人を持ち、サンドラは彼らとも自然に交流して、作品には出てこないけど、フランスではきっと婚外子も珍しくないし当たり前なんだろうなと思う。
家族という形に対しておおらかというか、フランスのそういうところは日本と違ってとてもいい。
とはいえ、作中に大げさなドラマはない。
ボケた老親の介護に疲れ、仕事に疲れ、子どもの面倒を見ながら、妻子持ちの男と関係を持つという日常が淡々と描かれる。
誰しも多少の苦労を抱え、受け入れ、どこかでささやかな楽しみを得ながら生きているわけで。
C’est la vie. 平凡だけどそれが人生なのだなと、スクリーンの映像を見ながら思うのである。