東海道本線島田駅 13:41
名古屋から東京は近い。7時間くらいで着いてしまう。
10時にホテルを出て、朝のラッシュも終わって空いた電車で東へ向かう。気がつけば豊川を渡って豊橋に着いている。浜松行きに乗り換えだ。
先日の東京で、電車の荷棚の上に捨て置かれた漫画雑誌を見つけた。
昨今、マンガはネットからダウンロードしてスマホで読む時代である。電車の中で紙の雑誌を読む人を見かけることはほぼない。
だから無造作に置かれたまだ真新しい雑誌を見つけたときは、懐かしく感じたものだ。
30年前だったら心の中でラッキー!と声を上げてすぐさま手に取って読み耽ったことだろう。スマホがなかった時代は漫画雑誌が暇つぶしの格好のアイテムだった。
長崎の片田舎から東京に出て来てサラリーマンになった頃は池袋の外れのほうに住んでいた。
夜、帰宅するとき池袋駅の北口を出ると、段ボール箱の上にベニヤ板を渡して作った台の上に、週刊誌や漫画雑誌を並べて100円かそこらで売っているおっさん達がいた。
駅のゴミ箱などから拾い集めてきた雑誌を売っているのである。カタギの商売でないのは明らかだが、警察も見て見ぬふりというか注意されているのを見たことがない。
その頃の人気雑誌「週刊少年ジャンプ」は270円だったろうか。
それが100円で買えるのだから、安月給のサラリーマンが見逃す手はない。発売日に合わせて北口に行き雑誌を買った。「ビッグコミックスピリッツ」と「モーニング」がお気に入りでした。
電車の中で大人が漫画雑誌を読むのは日本だけなどと揶揄されたものだが、その頃が雑誌文化の全盛期であった。
荷棚に捨てられた雑誌を取ってページをパラパラとめくってみた。
巻頭グラビアのアイドルは顔も名前も知らない。連載中の作品も知っているものがひとつもない。また棚に戻した。知っている誰かが読むだろう。
時代に取り残されたような気がした。
島田で途中下車。駅南口の「フレッシュセブン」で夜ごはんを買う。小さなスーパーながら惣菜を自社製造している。しかもかなり種類がある。一人っきりで店番しているレジのおばさんにこれ全部作るのたいへんですねと言ったら、「そうなのよー。でも美味しいのよ」と笑顔で返された。