おのみち渡し船戸崎〜歌 15:20

 
 


何もなければ二人とも家に閉じこもっているので、たまにはミチコさんをどこかへ連れて行く。
 
こないだ福山で食べたラーメン屋がいたく気に入ったようなので、もう一度そこでラーメンを食べることにして家を出る。
 
12匹の猫を飼っているから、もうどこにも泊まりがけで行くことはできないし、ミチコさんにもその気はない。猫の餌をやるために夕方までには帰らねばならぬ。
 
結婚したときはこういう生活になるとはまったく想像していなかったが、人生はそういうものであろう。この先だってどうなるのかまったくわからない。
 


尾道から福山に向かうバイパスを走っていたら、土砂降りの雨に見舞われたが、それが梅雨明けのサインなのかもしれない。
 
ラーメンを食べ終えて、今度は沼隈町の道の駅を出る頃には真夏の陽射しが照りつけてきた。

ちなみに豚骨醤油ラーメンを食べたミチコさんだったが、いまいち期待はずれだったようで、なにごとも期待値が高いと満足度は相対的に下がるものだ。



夏の瀬戸内は美しい。
 
島に囲まれた海は静かで、おとなしく佇んでいる。 

派手さや雄大さはないかわりに、平凡でちまちました集落がいくつも点在している。
 
向島の歌から岩子島まで車を走らせて、海辺にある厳島神社に行ってみた。
 

 
途中の海べりで制服姿の女子高生二人が数字の1と7の風船を持って楽しそうに写真を撮っているのが見える。
 
青い空と海の間で、宝石のようにキラキラした笑顔の二人。
 
まるでカルピスウォーターのCMのような光景に思わず車を停めて駆け寄って写真を撮り……
 
「やめときなよ。ヘンタイだと思われるから」
 
隣のミチコさんが冷徹に言い放つ。僕も青春時代に戻りたい。