ビジネスホテルホワイト(和歌山県田辺市)
2階のフロントに上がると誰もいない。
フロントの奥は、ごちゃごちゃと生活用品が積み上がった居間兼食堂といった感じの部屋である。白々と蛍光灯に照らされて ひっそりとしている。
とりあえずチェックインしなければならない。すみません、と声を上げると、誰もいないと思ったソファの上の毛布が持ち上がり、おばあさんがむくりと起きる。そして寝癖のついた髪のままよたよたと近づいてきて、錆び付いた声で「いらっしゃい」。ささやかにホラーである。
部屋に入ると、机の上にサービスのおにぎりとゆで卵が置かれていた。