山陽本線尾道駅 15:14

  
 
 
 
  
秋雨前線が居座っている。
山陽線を東上する間もところどころで雨が降り、米原から乗った列車は、真っ暗な山の中を濡れながら走る。
 
尾道から岐阜県多治見までは約8時間。
朝早く出れば、ひと仕事して日帰りできる。そんなことする人はいないと思うけど。
 
名古屋に22時過ぎに着いて、中央本線中津川行き快速に乗り換え。
折り返しの列車が着いてロングシートに腰を下ろすと、向かいのシートにティッシュを丸めたようなものが残っていた。
 
拾うおうかと逡巡していると、すぐに他の乗客が乗ってきてしまった。
彼らはその紙くずを避けるようにして座る。歯が抜けたようにロングシートのそこだけが空く。若い女性が座ろうと座席の前まで行き、それに気がついて立つことを選ぶ。つまんで床に落としさえすれば座れるだろうに。
 
まこと人の心理というのは面白いものである。
鼻をかんで丸めたようなティッシュ一枚が、こんな抑止力を持つとは。
 
そこだけ空いたままかと思われたが、金山から乗ってきた小柄なおじさんはそれを丁寧につまみ上げ、床に落とすことなく窓枠にそっと置いて座った。
 
 
山陽本線三石駅 17:27

山陽本線相生駅 18:00

東海道本線名古屋駅 22:22