常磐線勝田駅 18:25


 
 
 
小雨混じりの太平洋である。 
寄せ返す波と戯れるように少女は濡れた砂浜の上を駆け回る。彼女の赤いメガネのレンズに無数の雨粒。
 
中学二年生は勉強や習い事に忙しいらしい。彼女は学校の様子を話してくれる。話せることと、そうでないことを分けているような気がする。
 
彼女には子どもらしい屈託のなさと、大人のような醒めた思考が同居している。
いやむしろ、ぶらぶらと生きている僕より大人かもしれない。この先も彼女は一人で道を切り拓いて歩いてゆくだろう。
 
 
ひたちなか海浜鉄道で那珂湊から阿字ヶ浦までに短い旅をした。
茨城交通時代に乗ったことがある鉄道で、当時乗ったキハ20が留置線に止め置かれて錆びついている。
 
かつては地味な地方鉄道だったが、第三セクター化されて鉄道自体をコンテンツとして売り出すようになった。
地域的に典型的な車社会であって乗客が増える見込みはないが、少しでも鉄道を残そうという姿勢が見られてよい。
 
那珂湊駅には「おさむ」「ミニさむ」という名前の2匹の猫が住み着いているらしく、女の子と猫の写真の看板を眺めていたら、駅員さんが来て「ここに寝てますよ」と事務室の窓際に置かれたケージの中で丸くなっている黒猫を指差した。