広島空港 12:46
手荷物検査を抜けるときに引っかかって時間を取られた。
原因はカメラ用のバッテリーである。リチウムイオン電池は預けられないので、手荷物として機内に持ち込むしかない。
十数個の種類の異なるバッテリーをいったん取り出し、再びバッグをX線の検査機械に通す。
それだけなら他の空港でもたまにあることなのだが、小太りの検査員の男は額に汗を浮かべながら「ここにテープをお貼りしてよろしいでしょうか!?」と言う。
リチウムイオン電池の発火とされる火災が起こり、アメリカの貨物機が墜落したのは2010年のことである。
それを防ぐためにバッテリーの金属端子に被せるように黄色いビニールテープを貼るのだ。
こんなことは羽田でも成田でも、アメリカの空港でもしなかった。この念の入った作業をするのは、ひょっとすると世界で広島空港だけかもしれぬ。
ハサミでビニールテープを短く切ってはバッテリーひとつ一つに律儀に貼る彼は、ただひたすらに職務に忠実である。空の安全は彼によって守られているから、僕はそれが終わるのをじっと待っている。
しかし…なぜ広島空港でだけこんなことをするのだろう…。