東急電鉄田園都市線二子新地駅 14:39








  
 
 
 
  
一歳の誕生日記念写真を公園で撮りたいとの希望だったが、おうちの中に変更していただいた。
 
外は寒い。なによりまだ歩けない子どもは、いきなり公園に連れ出されてカメラの前で笑うことはない。
 
家の中にお邪魔すると、壁にはパステルカラーの誕生日の飾り付けがなされている。ガーランドの下にはパパのお手製だという子ども用のイスが置かれている。なかなかよくできている。つまりそこで写真を撮りたいのであろう。
   
しかし僕はその飾りには目もくれず、リビングで子どもと遊び始める。ひとしきり遊んで子どもと距離を縮めてから、ようやく飾りの下に子どもを座らせる。
   
たいていの場合、大人は結果をすぐに求めるたがる。
 
笑顔の写真を撮ることが目的になってしまっていて、その時間を子どもと楽しく過ごすことがなかなかできない。ちょっともったいないなあと思う。
    
小さな子どもは写真を撮られているなんてまったく思っていない。ただ遊んでいるだけである。だから僕は写真のためではなく、遊ぶための1時間だと思っている。
 
  
 
以前ヘアモデルの撮影でお世話になった美容室がご近所だったので、撮影を終えて顔を出した。
 
ご夫婦でやっているお店である。施術中にもかかわらず手を止めて店の外に出てきてくれて「また撮影お願いします」という。彼は子どもが生まれるので、と付け加えた。
 
傍の奥さんのお腹に目をやれば、中には赤ちゃんがいる。めでたい。知る人だからとくにめでたい。お祝いを言ってから、二子新地駅から電車に乗る。
 
乗って気がつく、せっかくの機会だったのだから二人の写真を一枚でも撮ってあげればよかった。おめでたに喜びすぎて、カメラを持っていることをすっかり忘れてしまっていた。
 
どうも僕は自分がフォトグラファーであるという自覚が薄いのかもしれない。