東北本線川口駅 16:30
緋色の着物を着て彼女はふらりと現れる。
長身である。ファッションモデルのようにスタイルが良い。
学園祭の実行委員をしていると話してくれる。やることが多くてたいへんらしい。
雨が降り出しそうな空の下で彼女はよく動く。
午前中にスタジオ撮影をしていて、疲れているだろうと思ったら「大丈夫です」と言う。
体力はあるのだ。
「空手やってたんで」
それはすごい。しかも部活じゃなくて道場に通ってたとは。
週一?「週六」まじか。「毎日4時間やってました」
思わず僕が嘆息する。まさに才色兼備。並の男では彼女の彼氏になれまい。
高校時代は楽しかっただろうと言ったら、「いやー」と返事を濁す。
ちょうどコロナと重なった高校生活は自粛ばかりでつまらなかったそうである。
それはそれは残念であったろう。なんだか申し訳ない気持ちになる。
十代の日々は二度と帰らない。学生時代にこそ青春を楽しんでほしい。
いい大人になるためにはいい青春時代が必要なのだ。