東京都小金井市中町 10:45











 
 
  
男の子は何かに呼ばれたように緑の草の上を駆け出してゆく。そのあとをパパとママがゆっくり追う。
暖かい春の陽射しの中で家族が同じ時を過ごしている。
  
毎年のようにお会いして6回目だと、家族はカメラをまったく気にせずやりたいことをする。立ち位置とポーズの指示をしたのは、桜の木の前で男の子のランドセル姿を撮るときだけであった。家族を撮るというより、家族の「時間」を撮っていた。
 
男の子は、背負ったランドセルをすぐに下ろそうとする。4月からの彼の小学校生活が目に見えるようだ。学校から家に帰ったら、すぐにランドセルを放り出して遊びに出かけるタイプ。小学生男子とはかくあるべしという感じだが、どうして彼らはアホなことばかりしたがるのだろう。
  
撮影終えて川沿いの道を歩く。
  
野川にかかる赤い欄干の天神橋の両岸には桜の木があって、ほぼ満開。それを目当てにカメラを持ったおじさんたちが集まってくる。僕がカメラを構えていたらすみませんと声をかけられたので振り向くと、カメラを持った五十がらみの男が満面の笑みを浮かべ「桜撮ってるの?」と、親しげに声をかけてきた。