尾道 16:54


 
 
 
発送を終えて海沿いを自転車でゆっくり走る。日が長くなって嬉しい。
 
スーパーで買物をすませて坂道を自転車で押して上がっていると、お寺の前の石段に高校生のカップルが並んで座り、楽しそうにおしゃべりしていた。なんというか、大林宣彦の映画の世界そのままの情景だったので、思わず立ち止まる。いつものシグマ30mmをつけたカメラはバッグの中にある。
 
彼らのほうに近づいて、写真を撮ってよいかと尋ねると、戸惑った笑みをもらしながらも、いくぶん迷惑そうに断られた。至極当然の帰結であったが、声をかけずに立ち去るよりは後悔が少ないだろう。
  
20年以上も前のことだが、フィルムカメラを手に町を歩いていた頃は、見知らぬ人に声をかけて、よく写真を撮らせてもらったものである。撮られる人たちもさほどためらわずにカメラの前に立ってくれた。世間のおおらかさは少しずつ失われていき、もう二度とそういう時代は戻って来ない。