東京都武蔵野市吉祥寺南町 12:20




 

  
小学校の二分の一成人式を撮る。
学校指定のスクールカメラマンは入っておらず、四年生のご父兄から依頼されての撮影であった。保育園の卒園式では同様の撮影依頼が何度かあったが、小学校の行事でもそういうことがあるのか。
   
僕が小学生だったときにはなかった行事で、実際に見るのは初めてであった。子どもがひとり一人立って、親への感謝の言葉と将来の夢を話す。保育園や幼稚園の卒園式に似ている。違いは子どもたちの語彙力が上がり、夢がより具体化していることだ。
 
大人の世界が垣間見える年齢だからか、半数くらいの子どもが「仕事でお金を稼ぎたい」と話すことに驚く。まだ10歳でお金に執着しなくてもよいように思うが、彼らの希望を否定することはできぬ。
   
子どもたちのスピーチを聞きながら我が身を振り返る。
 
10歳のときに自分が何になりたいかなどと考えたことはなかったように思うが、小学校を卒業する年になって、担任の先生に「旅行会社の添乗員になりたい」と話したことは覚えている。鉄道好きが高じて一人で旅行に出かけるようになっていたから、仕事で旅をすることに憧れていたのだろう。
   
宣言から10年後の就職活動では旅行会社の面接すら受けず百貨店に就職したものの、今こうして日本全国を旅しながら仕事するようになったから、思春期の夢は遠い将来に意外な形で実現するのかもしれない。