名古屋鉄道名古屋本線神宮前駅 12:51
穏やかな秋晴れの土曜日である。
駐車場の警備員は次々にやってくる参拝客の車を誘導するのに忙しい。参道は行く人帰る人がすれ違う。
三歳の七五三に訪れた男の子はお宮参りでも来ているけれど、当然ながらそのときの記憶はない。行き交う大人たちを不安そうに見上げている。
彼の両親に初めて会ったのは5年前。
二人が婚姻届を出した市役所の前で写真を撮った。夕陽が駐車場を照らしていた。
https://miharayuu-photomariage.blogspot.com/2013/11/blog-post_23.html
それから子どもが二人生まれて七五三とお宮参りをするなんて、そのときは考えもしなかった。
なにかとたいへんだけれど、先のことがわからないからこそ、今を生きられるのだろう。
祈祷の間に外で待っていると、先に終わった家族が拝殿の前に長い列を作っている。
順番に後ろの人にカメラを託し、記念の家族写真を撮っている。三脚を持参している人は時間がかかるので、列から離れた場所で写真を撮っている。
その光景を見ながら、代わりに撮ってあげようかと逡巡する。
僕にはただシャッターを押すだけでなく、笑顔を引き出す技術がある。撮ってあげたら喜ばれるだろう…
しかし、そのためにここに来ているわけではないし、境内には神社専属の写真館も机と椅子を出して写真を撮っているから、思いとどまる。
ただひと組だけ、三脚で写真を撮るのに難儀していたお宮参りの家族に声をかけて、代わりに写真を撮った。
声かけして無表情だったおじいちゃんの笑顔を引き出す。するとおばあちゃんが僕ならできると見て取ったのか、抱いていた赤ちゃんを差し出すようにして「この子も撮ってくれませんか」と言う。さすがに丁重にお断りした。