大交北部バス大貞公園 17:12
薄いピンク色に暮れかかる空の下を、帰宅する高校生が自転車で走ってゆく。
バス停でバスをただぼうっと待っているだけの30分間が、あっという間に過ぎる。
人と人の縁というのは、どこでどう繋がっているのかわからない。
あまり他人と関わることの少ない僕であるが、いただいた縁はとてもありがたいものだと思う。
会社員を辞めてすぐの頃、エキストラとかモデルの仕事をしていた時期があった。
そのときにTVCMのスタンドインの仕事で知り合った女性のモデルさんがいつしか結婚して男の子を生んで、その子の五歳の七五三撮影を依頼いただくなんて、大げさではなく生きててよかったと思える。
中津駅からバスに20分ほど乗り、訪ねたパパのご実家で男の子の着付けをする。見ていた彼のひいおばあちゃんが「かわいいねえ」と呟く。今日はハレの日ですよ、おばあちゃん。
着付けが済んだら、神社へ行って祈祷し、写真を撮ってお別れする。僕ができることはそれだけだ。
この先再び彼に会えるのかどうかわからぬが、生きていればいつかそういうときが来るかもしれない。縁というのはそういうものだと思うし、僕はそれが楽しみだ。だから細く長く、この仕事を続けたい。
手先の器用なママは今日の七五三のためにブローチを作ってくれていた。