山陽本線広島駅 16:07
秋の陽射しが境内を静かに照らす。やや汗ばむほどの陽気である。
広島駅から徒歩10分ほどの鶴羽根神社は訪れる人も少なく、七歳と三歳の女の子二人が歩く草履の音がよく聞こえる。
彼女らが着ている着物はママが三歳と七歳のときに着たものだそうだ。今日が終わったら、また20年くらい箪笥の奥にしまわれて、大人になった娘たちの娘が着ることになるんだろうか。
七五三は子どもたちにとっては、基本的につまらない行事である。参拝の意味がわからない。神社には遊具が何もない。
つまらないから「笑って」と言っても笑わない。
そういう子らを少しでも楽しませるために遊ぶ。
子どもと遊ぶときのネタはいくつかあって、さいきんは葉っぱやドングリをよく食べる。
子どもの前で落葉やドングリを口にくわえて「まずっ!」と吐き出すだけなのだけど、意外性があるのか子どもが興味を示す。ノってくれば、子どもが僕に食べさせるために落ち葉を拾って差し出してくれる。
子どもを楽しませるためとはいえ、こんなことほかのフォトグラファーはやらないだろうなあ…
撮影を終えて、傾いた陽を浴びながら家族が参道の石畳に弱ったカマキリを見つけて他愛もない会話をしているときが、一番その家族らしかったように思う。あえて声もかけずに撮っていた。はい並んで、などと言ったら、あっさりその雰囲気が壊れてしまうような気がした。子どもが笑ってなくたっていいんだ。