名古屋鉄道河和線上ゲ駅 17:00
七五三の前撮りである。
ご家族のおうちにお邪魔すると、五歳の男の子は羽織ではなく裃(かみしも)を着ていた。珍しいので着付けをされていたパパの母上にそう言うと、パパの子どものときの七五三も裃だったという。ご先祖はお武家さんなのだろうか。当の男の子は、仮面ライダーのコスチュームのようだとご満悦であった。
撮影終えて、帰りのバスが来るのは30分後だったので名鉄の駅まで歩く。知多半島の丘陵地帯からゆるやかに下りてゆく感じになる。
道を歩くだけで、半世紀ほどの時間が巻き戻る。
丘の上は新しい家ばかりだったが、駅が近づくにつれて少しずつ古い家が増え、駅から徒歩5分圏内は昭和40年代に建てられたと思しき古い木造家が密集している。
それらは約50年前、名古屋の会社に勤めるサラリーマン諸氏が建てた「マイホーム」だったのかもしれない。彼らは塗りのはげた家同様に年老いて、その中でひっそり暮らしているのだろうか。
道端に二人組の男がいて、古い家をタブレットで写真を撮ったり何やら相談しているのを見ながら通り過ぎる。不動産屋か建設会社の社員か。10年後にまた来たら、古い家は消え失せて無機質なマンションが林立しているのかもしれぬ。