尾道 18:12
山陽線の電車は運休が続いていて、街に観光客の姿はない。
飲食店も断水のためシャッターを下ろしたままの店がほとんどである。東日本大震災のあと、計画停電の影響で明かりが少なくなった渋谷の街を思い出す。
ひっそりとした商店街をポリタンクを乗せたスクーターが走る。ペットボトルを手提げに入れて歩く人。
市役所の給水所に行くのが日課になって一週間が経つ。地域によって水道が復旧し始めているらしいが、まだあと数日は給水所が必要だ。
給水所には尾道市だけではなく、他県の自治体からも給水車が来て水を配っている。
1回あたりの給水量は12リットル。これでもふだんと同じように洗い物などすればあっという間になくなってしまう。今まで一日にどれだけの水を使っていたのかと思う。
6本のペットボトルに水を入れてもらって家路につく。
国道から山手に上る陸橋から線路を見下ろせば、艶やかに光るはずのレールの表面はすでに茶色く錆びている。水と同じように電車は運休が続いており、踏切の遮断棒は上がったままである。
山陽本線は来週には福山〜三原間が運転再開されるようだが、その先三原〜広島間の再開には数ヶ月かかるらしいから、観光客が激減するのは間違いない。今年の尾道の夏は静かに過ぎるだろう。