尾道 19:33
日暮れの後、外がピンク色になったので外に出てみる。
定点写真のように撮っている数十メートル上の空き家に行くと、細い道が夏草に覆われてしまっていて、自然の勢いに圧倒される。空き家になってずいぶん経つであろうが、完全に草に覆われていないのは、誰かが来て手入れしているからだろうか。
たまに尾道で撮影におすすめの場所はありますかと聞かれることがある。
昭和時代の古ぼけた家々と細い路地が入り組んだ街並みは、どこで撮っても絵になると思うのだが、それは僕のような趣味嗜好の持ち主に限られるであろう。
きれいに整った公園などで写真を撮りたい人にとっては、まったく不向きな土地である。まして平成生まれの子どもたちが、汲み取り便所の匂いが漂う昭和の木造長屋に興味を示すとはとても思えぬ。
尾道は倉敷や宮島のように万人が認めるような観光地ではない。だから尾道で撮影したいという人は、よくよく慎重に考えるべきである。とくに夏場に石段だらけの路地をさまよい歩くのは、相当しんどいです。
やや偏狭で、俗化を嫌う僕が言うのだから間違いない。