尾道 12:05
境内の赤いモミジが冷たい風に吹かれて揺れる。
駐車場に車を停めて外に出ると三ヶ月の赤ちゃんは分厚いダウンのコートを着せられる。
それなのにママはニットだけでジャケットやコートを着ていないのだけど「大丈夫です」と言う。
お宮参りの撮影では、ママが赤ちゃんを抱っこしていることが多い。
30分も抱っこしていると、腕が疲れてしんどくなってくる。
撮影中に限界が来て、夫に抱っこを代わる人も少なくない。
だから記念写真を撮るときだけママが赤ちゃんを抱っこして、それ以外はパパが抱っこするようにすすめるのだが、彼女ははじめからずっと赤ちゃんを抱っこして、そのまま祈祷を受ける。
祈祷のあとに写真を撮る段になっても「大丈夫です」と言う。
赤ちゃんは5kg以上あるからしんどいはずだと思うのが、そんな素振りをまったく見せない。
本当に大丈夫なのかもしれない、体力と腕力には自信があるのかもしれない。
と、一瞬思ってしまうが、やはりここは抱っこをパパに代わってもらおう。
二歳のお兄ちゃんと赤ちゃんと、二人の子どもの面倒を見るのはかーなーりたいへんだ。
どうか無理せずこの育児期間を過ごしてほしいと思う。そうは言っても実際は難しいかもしれないけれど。
おくるみのようなダウンコート着た赤ちゃんに祝い着をかけると顔が埋もれて見えなくなってしまう。
コートを脱がせて、それでは赤ちゃんが心配なので代わりにフリースのブランケットを巻く。
パパとママは一生懸命だ。
彼らがいつかおじいちゃんおばあちゃんになって息子と娘のお宮参りに行くことがあれば、肌寒い今日のことを思い出すんだろうか。
