山陽本線福山駅 12:54
たっぷりの陽射しで暑いくらいの小春日和である。
境内の紅葉が赤く色づき始めている。
神社は小高い丘の上にあるから、家族みんなで長い階段を上る。
五歳のお兄ちゃんが三歳の七五三参りをしたときには泣いてばかりだった弟くんも三歳になり、二人で小さな拝殿の床几に座っている。
備後護国神社の祈祷では宮司さんが祝詞を唱えたあとに太鼓を叩きながら朗々と謡をうたう。
そこに、
しろかねもくがねもたまもなにせむにまされるたからこにしかめやも
(銀も金も玉も何せむに優れる宝子にしかめやも)
という一節が挟まっていて、なんとなく覚えがあるなと思ってあとで調べたら、万葉集の中の山上憶良の有名な歌でした。
どんな金銀宝石も子どもに比べれば価値はないという意味で、本来の祝詞と合わせて謡ってお祝いしてもらえるというのはありがたいことだと思う。
お兄ちゃんは終わったあとに「たいこたのしかった、おしごとがんばってね」とはっきりした声で言い、宮司さんは思わず相好を崩す。
三歳のときの七五三を思い出し、わずか2年の間の彼の成長ぶりに僕は心の中で感嘆の声を上げた。
子どもってほんまにすごい。