広島県福山市芦田町大字福田 12:27





  
 
 

三年前、ぶかぶかの中学校の制服を着ていた彼は高校生になる。いつの間にそんな時間が経ったのだろう。
無口な兄弟はまったく笑わないが、家族写真を撮る。撮っておきたいと思う気持ちに対して撮る。満開の桜が彼の新しい春を祝っている。

彼の父親は眼鏡屋さん一筋。三年前に独立してお店を構えた。家族写真のあとで店内写真とプロフィール写真を頼まれた。個性的な眼鏡がならぶお店だ。そのうち老眼鏡が必要になったらお世話になろうと思う。

Optical Design
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撮影に車で行ったのは、一時間に1本の福塩線の電車に間に合わなかったからで、迷わないように地図を何度も見ながら松永から山越えして駅家まで行った。
 
今日はこの一件だけなので帰りは急がない。のどかな景色を眺めながらゆっくり走る。昔ながらの家が建ち並ぶ集落に南欧風の家が建っていて、もったいないと思う。田舎の景観はそこに住む人には興味がないのであろう。おしゃれな家に住みたいと思う若い人の気持ちもわかるのだが、場違いな印象は否めない。
 
勘を頼りに走っていたら、来るときに通った県道ではなく落石だらけの山道が現れる。地図を見たらその道でも帰れるようだ。県道を探して引き返すのも時間の無駄なので、すれ違いもできないような石ころだらけの道に入って行く。
 
電車では来ることができなかっただろうから、かえってよかったかもしれない。
車を止めると風の音に混じってウグイスや知らない鳥の鳴き声が聞こえてくる。しばし山の中にたたずんで春を楽しんでいた。