広島県府中市元町 12:20








 
 
 
真っ青な空が広がっている。
 
ドングリの実を上からばら撒いたかのようになっている神社の階段を転ばぬよう気をつけつつ上がると、小さな拝殿が現れた。
  
絶好の撮影日和であるが、肝心の子どもはひとり一人違うから、撮影がどうなるかはそのときでないとわからない。
 
遊んでいるうちはよくても、いざ記念写真の場面になると、嫌がったりふざけたりして撮れないケースは多い。
 
数え三歳の男の子は怖がって馴れてくれずに泣かれてしまった。なかなかうまくいかぬものである。お宮参りの弟くんは終始ご機嫌で、こちらは問題なく写真が撮れたのだが…。
 
 
 
東京の府中市と違って、広島の府中市にはさしたる観光名所もなく、街の中はほとんど人が歩いていない。
  
少し散歩すると、時代から取り残されたような昭和時代の渋い家屋がところどころに残っていて、かつてそこでどんな生活が営まれていたのだろうかと思う。
 
駅前の角には三角形の敷地に経った喫茶店がある。引けば軋んだ音を立てそうなドアには「営業中」の札が掛かっている。開けて中に入ってみれば、意外にもおしゃれで落ち着いた雰囲気の店内である。
 
定番のスパゲッティを頼もうとすると、ごま塩頭の店主が15分くらいかかると言う。「麺を湯がかんといかんけえね」じゃあ、オムライスを。了承しかかった彼に横から妻が止める。「ごはんがもうないんよ」
  
結局、湯気を立てて焼きそばが運ばれてくる。炒り卵が混じっている焼きそばを食べたのは初めてであった。