大阪環状線福島駅 13:00







  
 
 
 

都会のビルの谷間にある小さな神社で着物を着た双子の子らは遊ぶ。
  
遊ぶのはよいのだが、記念写真は撮らねばならぬ。
 
しかし双子の男の子は足袋を嫌がって機嫌を損ねてしまう。
 
七五三に来る他の家族を見ていると、着物の足元が靴という子どもも多いが、記念写真を撮るときは、僕はできるだけ足袋に草履を履いてもらっている。
 
結局、彼は裸足で草履を履いて記念写真に収まった。
 
幼い子どもの気持ちを考えると、嫌がるものを無理に押し付けなくてもよいかもしれない。
 
しかし僕が彼に何度も足袋を履かせようとするのは、その日の記録として写真が残るからである。出張撮影のスナップといえど、整った姿の七五三写真を撮りたいと思う。
 
三歳の子どもには七五三の記憶がほとんど残らない。だからこそ、ドタバタの参拝であっても写真だけはきれいなものにしたい。そんなにこだわらなくてもよいのかもしれないが…
 
 
大阪環状線の福島は大阪駅から西へひとつ隣の駅である。
 
ホームに大きな広告板があって、よく見れば地元の車の整備工場であるらしい。よく見れば、というのは広告コピーがやたらと大きくデザインされているからである。
 
「こんなに安くてインカ帝国!!」という駄洒落ともつかないコピーと、親指を立てた社長さんらしき男性の写真のインパクトが大きすぎて、肝心の広告の内容があまり頭に入って来ぬ。
 
東京からひとつ隣の有楽町駅にこんな広告は存在しない。大阪らしいなあと思いながら、空港へ向かう。