鹿島線十二橋〜潮来 9:27
東京から2時間くらいで来れてしまうからなのか、景色のよいローカル線を挙げるときにその名が出ない鹿島線。
霞ヶ浦の湖面の上をゆく電車からの眺めはほかではあまり見られないものである。とくに田植え前の水を張った田んぼが一面に広がって、青空を映す光景は絶景だと思う。
終点に着いても名所が鹿島神宮くらいしかないから、観光客は佐原だけ見て帰ってしまう。もったいないことである。
その佐原から乗った鹿島線の電車はわずかな乗客を運ぶ。終点に着くと、みなそそくさと駅を出ていき、待合室は空虚さで満たされる。
駅前では地元の商店主らが、クリスマスのイルミネーションの飾り付けに忙しい。
だが正月とサッカーの試合がある日以外は訪れる人も少ない駅である。華やかな電飾がかえって寒々しいことになるのではなかろうか。
駅からゆるやかな坂を上れば、鹿島神宮への参道に出る。道の両側に連なる土産物屋や観光客相手の飲食店は、朝10時を過ぎたが閉まったままで、足音さえも吸い込まれてしまいそうな静けさ。