鹿児島本線熊本駅 13:13





 
 

 
神社に着くと、拝殿の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
 
僕より先に来てお宮参りの祈祷をしているらしい。参拝する途中の様子が撮れなかったのは残念だけれど、そう感じるのは僕だけで、記念の集合写真が撮れればよいのかもしれない。
  
二ヶ月の赤ちゃんは眠いのか空腹なのか、あまり機嫌がよくない。あまり時間をかけないように手早く撮る。
  
熊本県庁の前には立派な銀杏並木があって、パパとママはそこで写真を撮りたかったらしい。しかし、そこで撮るくらいなら会食するレストランで赤ちゃんを寝かせて、その姿を撮るほうがよい。
 
何度も書いてることだけど、立派すぎる大きな木は、そもそも子どもの写真の背景としては不向きなのだ。
 
子どもには背丈に合った小さな木か、枝振りの低い木がよい。そんな話を移動中の車の中でした。それに二ヶ月の赤ちゃんは、数メートル離れてカメラを構えるフォトグラファーの存在などまるで気づいていないから、何もリアクションしてくれないし。
  
銀杏並木の代わりに、お城のそばを流れる坪井川沿いの緑地帯に家族を誘った。
 
「こんなところにいい場所ありましたっけ」と疑わしそうにパパが言う。
 
写真が映える「いい場所」は、おそらくフォトグラファーでないとわからない。赤ちゃんを抱いた夫婦を立たせて、85mmのレンズをつけてファインダーを覗くと、雑木林のような木立が素敵な背景になっていた。