東京都世田谷区喜多見 13:09








 
 
 
東京から昭和時代の痕跡は年々薄れているけれど、何度か通った道に昔の商店長屋を見つけて、しばらくそこに佇んでしまった。
 
世田谷のはずれのこの地域にとって、この長屋がかつて唯一のショッピングモールだった時代があるはずだ。
  
四、五軒の店が軒を連ねたような木造モルタルの二階建て。シャッターを下ろした店ばかりのなか、一軒だけ開いていた魚屋さんの店の前に、白髪頭の老店主が所在無げに立っていてこちらを見ている。
 
建物の写真を撮ってから彼に近づいて挨拶した。「廃墟でしょ」と彼は言う。その口ぶりから、今までに僕と同様の人がここに訪れたと見る。
 
この長屋ができたのは60年くらい前のこと。魚屋さんは50年くらいここで商売をしているという。写真を撮られて迷惑というより、暇な時間に話し相手が訪れたことをむしろ歓迎するような風情であった。


五歳男の子の七五三は、小学生の兄と姉にとっては退屈な行事であるのは百も承知。わかっているから楽しんでもらいたい…のだけど、どれだけ応えられたろう。大きくなった子どもほど自然に笑わせるのは難しい。
 
それでも去年よりはよく笑ってくれたような、気がする。次に会えるのは彼らの成人式のときだろうか。