長崎電気軌道蛍茶屋支線諏訪神社 12:23






 
 
  
坂の町の神社には長い階段がある。
 
その中腹あたりに駐車場があるので、電車通りから一段ずつ上がってくる七五三詣での家族はいない。
 
諏訪神社は「おくんち」も行われる長崎で一番有名な神社で、十数組の子どもと家族が一度にお参りする。祝詞ではひとり一人の住所と名前を読み上げるので神主さんもたいへんだろう。
 
祝詞で住所を読み上げるのも理由があるのだけど、そのうち個人情報だからやめるべしとか言い出す人が出てくるのかなあと聞きながら考えていた。
  
 
三人兄妹の下の妹が三歳の七五三である。
 
祈祷が終わるまで不安げな表情だったけれど、遊び始めればすぐに笑ってくれるのは末っ子ならではの天真爛漫さ。
   
しかし、問題は一番上の八歳のお兄ちゃんで、祈祷のあとの記念写真を撮ろうとすると彼はお腹を押さえて痛いという。パパがトイレに連れて行ったものの、良くならずに戻ってきた。
 
とりあえず記念写真は撮ったものの、彼は全然笑ってくれない。
 
彼の様子を見ながら仮病かなと思う。なにかの(本人にもよくわからない)理由で拗ねて、そういうフリをしているのではなかろうか。
 
はたして彼が食いつきそうな鬼ごっこを仕掛けてみたら、すぐに小さな広場を走りまわって逃げる追いかける。やはり元気だった。
    
ひとしきり遊んで時間がきたのでカメラを首から外すと、彼は「え、もうおわり?」なとど言う。
 
ほんの30分前までのつまらなさそうな君はいったい何だったんだ。だから子どもは面白い。